戦後、駐留軍の払下げ車両を用いたのがそのはじまりとされるレンタカー業。昭和32年に運輸省(現・国土交通省)の指導によって許可制となり、以降バスやトラックといった車種の拡大、大手自動車メーカーの進出などによって業界は確実な成長を遂げていった。便利な上に経済的で安全性も高く、特に旅先での一時的な利用における需要は依然として根強いものがある。
「サービス業基本調査(総務省統計局発表)」によると、平成16年現在で「自動車賃貸業」の事業所数は4684ヵ所。総収入額は約1兆1342億円で、前回調査(平成11年)比98.6%となっている。
数字的にはやや縮小の傾向が見られるが、これはユーザーの需要が大手の企業に集まりつつある影響も考えられるだろう。レンタカーの利便性がひと通り認識された後、今度は「いい車に乗りたい」「もっと便利に使いたい」という、付加的サービスを求める声が強くなってきた。
豊富な車種、交通機関や宿泊施設とのセット割引、外車や高級車、エコカー(環境保護車)の取扱い、カーナビをはじめ周辺機器の搭載、乗捨て無料など各社は様々なサービスを考えて提供しているが、大手は中小の業者に比べてその体制を整えやすく、ユーザーに向けて幅広くPRできる環境を持っているため、サービス競争においては有利である。
今後売上げの格差はより広がっていくものと思われ、外資系業者にとっても国内大手の基盤の強さを考えると、苦戦は免れないだろう。この現状に対応するには、事業の新しい方向性が求められることになる。
旅行者中心の需要であるレンタカーだが、最近増えつつあるビジネスでの利用や、高齢化社会に合わせたバリアフリー車両の導入など、日常においてもレンタカーのニーズが増やせそうな要素に着目し、事業拡大の一環に加えてみる工夫も面白いのではないか。
年間トータルで考えると社用車の稼動率は意外に低い場合が多く、違法駐車の取り締まりが強化された影響で都心部の駐車場料金が高騰していることもあり、維持費節減のためレンタカーを利用する法人が増加している。個人向けと異なって季節的な変動が少なく、安定した需要が期待できるため、レンタカー会社側も今までのように利用されるのを待つだけでなく、積極的に営業活動を行っている。
今後も市場拡大は期待できそうだが、激しい競争も待ち受けており、24時間営業や割引特典つき会員カードの充実など、顧客法人の利便性を向上させるサービスの提供で顧客確保に努めたい。