貸した車が事故を起こした時の所有者の責任は?
自動車は現在、人々の交通手段として日常的な存在となっている。それだけに知人間での貸し借りも通常のこととして行われている。貸した人も借りた人も自動車使用に何の問題もなければ「ありがとう」の一語で貸借関係は終わる。しかし、交通事故を起こしたとしたら、その後の責任問題が生じて厄介なことになる。
自動車の貸借が無償であろうと有償であろうと、原則として貸し主の運行供用者責任は失われないというのが、最高裁判決(昭和48年)でも示されている。もし借り主が、約束の返還期限を超えて違法に返却しない間に交通事故を起こしたとき、その責任はどうなるか。
基本的には一種の「無断運転」の状態と言えるわけだが、車所有者の運行供用者責任が否定されることはほとんどない、と解されている。(昭和46年、最高裁の第一小法廷)
では、レンタカーの場合はどうなる。貸し出し中のレンタカーについては、業者が運行供用者責任を負うのが当然とされているが、契約期限を超えてなお、車が返還されない状況のなかで事故を起こしたとき、業者が車の回収に適切な努力をしておれば運行供用者責任を免責されるが、そうでないと責任追及がなされると考えなければならない。
当日中使用の約束でレンタカーを貸し出したが返還されず、翌日に借り主と連絡をとろうとしたができず、翌々日に警察に届け出たが受理されなかった。
その後も業者は借り主の住所地を訪ねたり、住民票を取り寄せるなど、回収の努力を重ねたが貸し出してから25日後に、借り主から転貸を受けたものが無免許運転で事故を起こした。
同事案で大阪地裁は「かなりの期間が経過しているが、その間、業者は回収に努力した」ことが認め、業者の責任を否定する判決を下している。
一方、神戸地裁は、料金請求の文書を発行しただけで、回収努力を行わなかった業者の運行供用者責任を認めた判決がある。
友人間の貸借はどうなるか。友人に「翌日に返す」という約束で車を貸したところ、それから約1か月間、友人間を転々と貸し回されて無免許の友人が事故を起こした事案で、東京地裁は「第一次の借り主とともに車の行方を捜し、警察に届けるなどして回収に努力した」として、貸し主の責任を否定した判決を下している。
いずれにしても、車の貸借は他の貸借関係と違って借り主の事故という問題を内包している。それだけに慎重でなければならないし、貸借期間中とその後の適切な処置がなされないとき、運行供用者責任を追及される恐れがあるので、それを踏まえたうえで実行しなければならない。