2005年4月、レンタカーで仙台市内の歩行者天国を暴走し、7人が死傷した事件に関する判決。
もちろん犯人は逮捕され既に無期懲役の刑が確定していますが、こちらの判決は死亡した被害者の遺族がレンタカー会社を相手に起こした裁判のもの。
判決ではレンタカー会社に自動車損害賠償補償法に基づく「運行供用者」としての賠償責任を認定し、6410万円の支払いを命じました。
そして今回の犯行で使われたトラックを貸し出したのも、偶然でしょうが仙台の事件と同じレンタカー会社だったのです。
当然、今回の被害者が同様の訴訟を提起することも考えられます。
レンタカーは犯罪や、最近では自殺に使われるケースが増えているかもしれません。
もちろん貸出にあたってレンタカー会社側にも借り主の適正をきちんと確認する責任は求められるでしょうが、ここで言う"適正"とは自動車を安全に運転する資格を有しているか否かを第一に問われると思います。
有効な運転免許証を所持しているか。健康状態(飲酒や薬物使用の有無等を含め)は運転するに充分なものか。こうしたことは貸出時に直接確認することが出来るでしょう。
ですが適正な条件を満たす借り主が、その後に車を使って犯罪を起こすという可能性までレンタカー会社が予見できるものでしょうか。
仙台の判決では「落ち度のない被害者側に事故の損害を負担させるより、運行に関与しうる会社に負担させることが公平である」という理由が述べられています。
確かに被害者保護という観点は近年注目を集めていますが、もちろん尊重されるべきでしょう。しかし、今回の事件ではレンタカー会社も見方によっては"被害者"にあたるような気がします。
現実的な面で言えば事件の犯人や親族に賠償能力がなかった場合、こうして大規模な企業にも責任があると判断されることで遺族には金銭的なもので賠償が行われます。もちろん遺族側にとっては"お金の問題じゃない"という心境でしょうが、少なからず被害に対する補償が「ゼロ」ではなくなります。
それはそれで喜ばしいことかもしれませんが・・・。
こうした事案が続くと、レンタカー会社も何かしらの対策を講じなければならなくなるでしょう。
貸出相手をより選ぶようになる(=例えば現金での貸出を止める)。
どんなに小さなことでもレンタカー会社の損失につながるような事があった客(=駐車違反、事故等)はブラックリスト化して業界内で情報を共有して貸出を拒否する。
会員制度を活用して、非会員や貸出実績の少ない客に対しては料金を割高に設定する(=会員で固定客に大幅な割引価格を設定する)。
企業側も防衛策を何か真剣に考えているように思いますが、それによってレンタカーを借りにくくなるなるようなことにはならないのでしょうか・・・。
また、小規模なレンタカー会社にとっては、より深刻な問題になるような気がします。
毎日jp(毎日新聞)2008年5月13日21時14分